2020年10月の厚生省発表(※)によると、新規大卒就職者の就職後3年以内の離職率は32.8%に上る。事業規模でみると、1,000 人以上の大企業では26.5% (前年比+1.5)、30 ~99人の中堅企業では40.1% (前年比+0.8)となっており、ここ15年ほど数字に大きな変化は見られない。
会社の将来を考えコストをかけて採用した新卒者やこれからのビジネスを支える若手世代のリテンションをアップさせるには何が必要なのか。弊社代表カルロ・ラポルタに聞いた。
大企業から中堅中小企業まで、新入∼若手社員の離職率の高さに課題を感じている企業の声をよく聞きますが何が原因でしょうか?
カルロ・ラポルタ(以下CLP):
社員のエンゲージメントに関するアメリカのレポート「10 Shocking stats about employee engagement」を見ると部下の離職についてマネジメント層の意識との乖離が大きいことが分かります。マネジメント層の89%は「彼らは賃金が原因で辞めていった」と考えているのに対して、実際にお金が原因で辞めた人は全体の12%だけでした。
では、なぜ彼らは辞めていったのでしょうか?
実は75%が「ボスが原因で辞めた」」と答えているのです。
原因に対する認識がこれだけ違えば、メンバーのモチベーションをアップするどころか更なる離職者を出してしまうことになります。
私たちは、若手社員の離職率の高さは「部下の本当の離職理由が理解できないコミュニケーション手法」に大きな原因がある、と考えています。
2025年までには、世界の労働人口の75%が35歳以下になるといわれています(※)。この労働の中心となる世代がマネジメントとの関係で離職してしまうのは企業にとっても大きな損失です。
※出展:出展元:https://www.businessinsider.jp/post-191188
マネジメントが原因となる離職を防ぐには管理職としてどう対応すればいいのでしょうか
CLP:
いくつかのポイントがありますが、今回はそのうちのひとつの「世代に対する理解」についてお話します。
例えば、「ミレニアル世代」「Z世代」という言葉がありますが、この世代の特長を正確に理解しているマネジメントはどれくらいいらっしゃるでしょうか。
「今どきの若者は」とひとくくりにしていませんか。
じつは「ミレニアル世代(1980年~1995年生)」と「Z世代(1996年~2012年生)」には明確な違いがあります。
Z世代は、生まれたときからデジタルデバイスの存在が当たり前の世代。SNSに囲まれて育った“New Silent Generation”と呼ばれる世代です。
つまり、スマートフォンを通じて「新しい、静かな、無言の」コミュニケーションを取ってきた世代です。
彼らはスマホ/SNSを通じて、これまでの「たて」の文化から「よこ」の文化を生み出しました。われわれマネジメント世代との意識の差が生まれた決定的なポイントはここにあります。
つまり、マネジメント世代は「同じ日本人だから、同じ組織に属しているんだから、同じ空間を共有しているのだから」といって筋を通してきました。少し違いがあっても、分かり合える、と考えています。
しかし、Z世代はこういった国/組織/地域の文化ではなく、共通する価値観やスキルのネットワークを作ってコミュニケーションをしてきました。
私たちの世代とは、人との距離感が決定的に違うのです。
この点を理解せず、「悩みがあるなら飲みに行って話をきいてやるぞ!」とか「最近どうだ?ちょっと話さないか?」といきなり距離を詰めると彼らは不快感を覚えます。
そして、自分と違う距離感をもって接してくるマネジメントに対して心を開かなくなってしまうのです。
この点について詳しくモチベーション応援番組“Mpowered Seed”でも解説しています。
彼らが育ってきた背景、持っている文化を理解することが大切なのですね
その通りです。
ダイバーシティという言葉がメジャーになっていますが、同じ考え方だと思っています。お互いを尊重する、という気持ちですね。
外国人や海外の企業だと彼らが違う商習慣や文化を持っていることを理解しやすいのですが、同じ日本人・同じ組織のメンバーだとその意識が薄れてしまうマネジメントが多いように感じています。
私はいつも、この世代との適切な距離感を保つために、以下の理解を深めるように伝えています。
1:彼らの育った環境とその背景への理解
2:適度の関係をつくる
3:彼らに会話をリードさせる
4:プライベートスペースを尊重する
なかなか難しいですが、この4点を意識することが、スムーズなコミュニケーションを生むとともに、彼らの「チームに貢献したい」「会社を通じて社会貢献できている」といった“内発的モチベーション”をアップし、継続的成長を遂げる社員へと改革させる第一歩となります。
この点については、無料のセミナーで詳しく説明しています。ぜひご参加ください。
※2020年10月 厚生労働省発表 https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00003.html