どのような理由で社員は辞めていくのか? この記事ではその原因と対策についてお伝えします。ぜひご一読ください!

◆製造会社A社の場合

社員数50人のA社。勤続5年以上の古参社員は40人、若手社員は10人。A社では過去3年で50人もの若手社員が辞めていました。

理由は、40人の古参社員が「いじわる」だったことです。例えば「納得いかないなら辞めれば?」と気軽に口にするなど、自分たちが社員を辞めさせているような状況でした。この記事で書いたようなコミュニケーションギャップが機能してしまったこともあり、多くの人がメンタル不調になり辞めていたのです。

本当は60人の社員が必要なのに、現状は50人しかいない。若手向けのポジションは20人分あるのに雇っても辞めてしまう。常に社員が足りず求人をかけているような状態でした。

マネージャーの年収は多ければ900万円はいきます。人材エージェントに支払う紹介手数料は雇い入れた社員の年収3割程度かかるので、年収900万円の社員を1人雇えば紹介手数料は300万円にもなり、この金額だけでも会社の利益率に悪影響を与えることは必至と言えるでしょう。

そもそもA社の場合、3年で50人もの人が辞めたせいで、3年間で50人分ものリクルート費がかかった計算になります。

その金額はどのくらいなのか?

安く見積もって一人当たりの年収を600万円とすれば、その金額は「600万円×50人×0.3(紹介手数料)」でおよそ9000万円にも及びます。3年間でこれだけの費用をリクルート費に充てている計算になるのです。この他にも面接に割いた時間や機会損失を考えれば、3年で1億円では済まない計算になるでしょう。

3年間で50人は極端に多い事例ですが、ここまでいかなくても、10人でも5人でもかなりの金額になりますよね。

実はこういった話はよくある事実です。

この事実の裏には、一体何が隠されているのでしょうか?

◆文化は「縦割りから横割り」へ

両親の共働き、核家族化が加速する日本。おじいちゃん・おばあちゃんと同居する家庭は減り、子供たちは親や祖父母から学ぶ機会が減っています。「叱る」文化もなくなりつつある。

このような状況下、子供たちは誰から学びを得ているのでしょうか?

私たちはこのように考えました。

・縦割り文化:両親、兄弟、先生など年上から習うこと

・横割り文化:同級生、同世代から習うこと

最近の子供たちや若者にとって、両親・祖父母・学校の先生などいわゆる「年上」から学ぶ「縦割り文化」が占める割合は2割程度、逆に同級生や同世代から習う「横割り文化」が占める割合は8割を超えると私たちは見ています。一方、現在40歳以上の人の場合、その割合は真逆になるのではないでしょうか。

年上から学べないのなら同年代や年下から学ぶしかない。成長には学びが必要です。社会との接触の仕方、社会に期待すること、社会に提供するべき価値など全て、若者にとっては親から教わるより新しいメディア・同世代から習得するのが「新常識」となっています。

「友達」のあり方も変わってきています。現代は、親が子供の頃にはなかったオンラインゲームやスマホ、SNSがあります。コミュニケーション方法や文化の変化に伴い、若者は常識をなくしたのではなく、常識を変えたのです。SNSの誕生により友達を容易に増やせる環境を整え、何百人、何千人と増やしていく。その結果、友達は接触の仕方の違いによって「リア友」「オン友」に二分化されました。

※リア友=最初リアルで会った人、日常的に会う人

古い世代よりゆるいとは言え、「先輩後輩」の概念がまだ少し残っており、実力に限らず年齢によって決められる部分がある

※オン友=ネット上で知り合った人、ネットでしか会話がない人

基本的に敬意の払い方は、年齢ではなく実力で決められる

横割り文化で育った若者は対立が苦手。嫌なことがあっても直接相手に伝えないのが基本で、突然関係を切ったりもします。これはオン友は切りやすいという風習から始まっていることで、リア友の場合でも嫌なことがあれば、面と向かって言うのではなく後からネット上で伝えたり、サクッと切ってしまうことも。簡単に増やすことができる反面、簡単に「切る」こともできてしまうのが最近の若者にとっての友達です。

よって彼らには「誰かを切る」ということに対しての思い入れがさほどありません。対立するくらいならさっさと切ってしまうので対立する必要などないし、そもそも対立に対処するためのスキルを身につける必要もない。突然一方的に連絡を絶つ(ブロックする)という意味の英語表現「ゴースティング」も彼らにとっては常識です。

例えば40歳以上の人が、「若者って常識ないよね」「こいつらいきなり辞めるんですよ」という愚痴をこぼすのを耳にしますが、そんな簡単な問題ではなく、その裏にはこういう風習があるのです。

このような根本的な理解から世代間のコミュニケーションを見直さないと、評価、権限移譲(デレゲーション)などの社内コミュニケーションは、全く上手くいきません。

離職率の高さを語るには、40歳以上の人とそれ以下の人とでは「育った環境とそこで生まれた文化が大きく異なる」ということを、古参社員がまず理解する必要があるでしょう。

◆ 若手は「エネイブラー」を求める

若手社員と古参社員の決定的な違いを述べてきましたが、ではその違いをどのように使えば若手が辞めていく現状を食い止めることができるのでしょうか? 

そのための私たちの提案は、「古参社員が若手社員のエネイブラーになる」ということです。

エネイブラーの役割は、例えばある夢を実現したい、こんなことを実現したいという気持ちを持っている若手に対し、あらゆる方法で仕事を実現できるような状況を作る、応援する、何かを提供する、実現可能になるようサポートすることを指します。応援するだけでいい場合もあれば、いろいろ教えなければならない場合もありますが、エネイブラーを日本語で言うと「縁の下の力持ち」となるでしょうか。そこにガイダンスする、コーチングをしていく、という意味も含みます。

例えば、古参社員が若手に対し「これ、金曜日までに作っといて」と伝えたとします。若手は「何で金曜までに?」「何で私?」「何でこの仕事?」と考え、「自分は金曜日までにできると言った覚えはない」などとコミットを感じない可能性が非常に高い。さらに古参社員との会話の前提が異なるまま仕事をしてしまうので、その結果は古参社員が期待する通りにはなりません。

それを古参社員は「なんだこれは!こんなので売れるわけないだろう」と怒ってしまったりする。そうなると若手はただムカつくだけ。「お前の指示が悪いんだろ」「お前の説明不足だろ」となってしまい、その後古参への声かけはなくなり、最悪の場合は辞めてしまいます。

この古参社員がもし、エネイブラーだったら。「これ、金曜日までに作っといて」という指示は、例えば「金曜日までにこの会社に売りに行きたい。理由はこう。資料作成お願いできるかな?」という「相談」になります。そうすれば若手は話を聞いて「今この仕事があって」などと素直に現状を伝えてくれますし、それに対しエネイブラーは「じゃあここは俺がやるよ、だからここはお願いしたい」という交渉を始めるのです。

エネイブラーは「リーダー」とも言い換えられます。ただ教えるだけではない、与えられた仕事をできるように導いてくれる人がリーダーであり、リーダーは「チームを勝たせる人」でもあります。

チームを勝たせる人がまさにエネイブラーです。エネイブラーにならなければ、若手はついてきません。今こそ古参社員が進んでエネイブラーになる時ではないでしょうか。

◆最後に

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

今回の記事、いかがでしたでしょうか?

当社Mpowered Sales株式会社は、

「人がみずから動きたくなる組織作りに特化したコンサル会社」です。それだけをやってきました。

次回は「世代間コミュニケーションギャップは指示待ち若手社員をつくる!」についてお伝えします!